未完の恋、指先で溶かして
『…わかった。今から会いに行く』

「え?」


 真広の即答は予想外で、思わず間抜けな声が漏れた。


『何驚いてんの。会いに行くよ』

「…馬鹿、夜遅いよ。行くなら俺が行くって」

『いや、私の家だと誰が張り込んでるかわかんないし。それに…、今は落ち着く所の方がいいでしょ』


 彼女の気遣いに、冷え切っていた心がじんわりと温もりを感じていく。

 迷いもなく「会いに行く」と言ってくれたことも、最後までこちらの心情を慮《おもんぱか》ってくれるところも、素直に格好いいなと思った。


「わかった。俺も今から帰るから、一時間後くらいに来てくれたらちょうどいいと思う」

『ん! 何かいる? 食べたいものとか』

「真広の作った味噌汁がいい。飲み過ぎた」

『何それ。味噌はあったよね? 適当に食材買っていくね』


 短いやり取りを終え、一度電話を切った。

 真広と話すと、いつも胸の奥がざわつく。

 何とも言い難い感情で胸がいっぱいになり、今の俺には、それを上手く言葉にすることができなかった。
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