`未完の恋、指先で溶かして
わからない
それからしばらく経った頃、急遽欠員が出た。
この時期に猛威を振るう、インフルエンザのせいだ。
ちょうどこれから大きな案件に取り掛かる予定だった伊勢という女性社員が、それにかかった。
他のメンバーでカバーしたいのは山々だったが、休んでいるのは彼女だけではない。どの局も人手不足は深刻な状況だった。
そんな時、ふと森山の顔が浮かんだ。彼女なら今、大きな案件は抱えていないはず。それでいて元々はストプラ局の人間だし、すぐに即戦力として動けると思った。
俺個人の感情としては、今さら彼女を呼び寄せたくはなかった。だが、背に腹は代えられない。苦い生唾を飲み込むようにして、俺は佐野の内線番号を叩いた。
『はい、佐野です』
「おはよ。ちょっとお願いがあるんだけど、一週間ほど森山貸してくれないかな? 伊勢がインフルにかかっちゃって」
前置きもなく単刀直入に切り出すと、佐野はわずかな沈黙の後、『わかりました』と短く答えた。佐野にだって思うところはあるはずだけど、何も言わなかった。
「ごめん、助かる」
『いつからですか?』
「いけるならすぐにでも」
『わかりました。すぐに行かせます』
返事を聞き届けてから「頼んだ」とだけ言い、受話器を置いた。
こんな形で再び距離が縮まることなど、俺ですら望んでいなかった。
この時期に猛威を振るう、インフルエンザのせいだ。
ちょうどこれから大きな案件に取り掛かる予定だった伊勢という女性社員が、それにかかった。
他のメンバーでカバーしたいのは山々だったが、休んでいるのは彼女だけではない。どの局も人手不足は深刻な状況だった。
そんな時、ふと森山の顔が浮かんだ。彼女なら今、大きな案件は抱えていないはず。それでいて元々はストプラ局の人間だし、すぐに即戦力として動けると思った。
俺個人の感情としては、今さら彼女を呼び寄せたくはなかった。だが、背に腹は代えられない。苦い生唾を飲み込むようにして、俺は佐野の内線番号を叩いた。
『はい、佐野です』
「おはよ。ちょっとお願いがあるんだけど、一週間ほど森山貸してくれないかな? 伊勢がインフルにかかっちゃって」
前置きもなく単刀直入に切り出すと、佐野はわずかな沈黙の後、『わかりました』と短く答えた。佐野にだって思うところはあるはずだけど、何も言わなかった。
「ごめん、助かる」
『いつからですか?』
「いけるならすぐにでも」
『わかりました。すぐに行かせます』
返事を聞き届けてから「頼んだ」とだけ言い、受話器を置いた。
こんな形で再び距離が縮まることなど、俺ですら望んでいなかった。