未完の恋、指先で溶かして
あまりの忙しさに真広とも会えずにいたが、残業の合間の休憩中、珍しくLINEではなく彼女から直接電話がかかってきた。
廊下に出てから着信に応じ、「もしもし?」と声を掛ける。
『ねぇ、佐久間くん』
「はーい?」
気の抜けた返事を返すと、彼女は『真紘と会った』と告げた。
その言葉に一瞬息を呑み、俺は足早に喫煙所へと向かった。
「そう。何で?」
『…仕事で、CM撮影に来るはずの女優が来れなくなったから助けてほしいってさ』
そんな報告は受けていなかった。現場が混乱していて、こちらに連絡を入れる暇もなかったのかもしれない。
喫煙所に入り、ポケットからタバコを取り出す。「…どうだった?」と、自分でも意図の測りかねる問いを口にした。真広が本当に、もう佐野に対して何も感じていないのか。それを確かめたいという、純粋な好奇心だった。
沈黙の間、俺は手の中のタバコを見つめた。やめたつもりだったのに、気づけば今朝、コンビニで手に取っていた。ストレスが溜まると何かに頼りたくなる悪癖は、まだ抜けきっていなかったらしい。
取り出し、口で咥えると、そのまま火を点ける。依存するほどではないけれど、ふとした瞬間にこうして逃げ道として吸っていた。
『驚くほど、本当に何も感じなかった。でもね、…まだ私もそれを信じ切れてなくて。だから、近い内に二人で会うつもり』
真広の言葉に、「…そっか」と短くこぼした。
どこか安堵している自分がいて、ますます自分の気持ちが分からなくなる。佐野への未練がないと聞いて安心するのは、俺が真広を意識し始めているからなのだろうか。
だとしたら、森山を想い続けた時間は、一体何だった?
思考は迷走し、吐き出した煙とともに白く濁っていった。
廊下に出てから着信に応じ、「もしもし?」と声を掛ける。
『ねぇ、佐久間くん』
「はーい?」
気の抜けた返事を返すと、彼女は『真紘と会った』と告げた。
その言葉に一瞬息を呑み、俺は足早に喫煙所へと向かった。
「そう。何で?」
『…仕事で、CM撮影に来るはずの女優が来れなくなったから助けてほしいってさ』
そんな報告は受けていなかった。現場が混乱していて、こちらに連絡を入れる暇もなかったのかもしれない。
喫煙所に入り、ポケットからタバコを取り出す。「…どうだった?」と、自分でも意図の測りかねる問いを口にした。真広が本当に、もう佐野に対して何も感じていないのか。それを確かめたいという、純粋な好奇心だった。
沈黙の間、俺は手の中のタバコを見つめた。やめたつもりだったのに、気づけば今朝、コンビニで手に取っていた。ストレスが溜まると何かに頼りたくなる悪癖は、まだ抜けきっていなかったらしい。
取り出し、口で咥えると、そのまま火を点ける。依存するほどではないけれど、ふとした瞬間にこうして逃げ道として吸っていた。
『驚くほど、本当に何も感じなかった。でもね、…まだ私もそれを信じ切れてなくて。だから、近い内に二人で会うつもり』
真広の言葉に、「…そっか」と短くこぼした。
どこか安堵している自分がいて、ますます自分の気持ちが分からなくなる。佐野への未練がないと聞いて安心するのは、俺が真広を意識し始めているからなのだろうか。
だとしたら、森山を想い続けた時間は、一体何だった?
思考は迷走し、吐き出した煙とともに白く濁っていった。