未完の恋、指先で溶かして
 それから、ただひたすらに仕事で時間を溶かし続け、気付けば金曜日になっていた。

 森山を意識する隙もないまま、彼女のヘルプ期間を終了していた。

 一息吐こうと自動販売機で飲み物を買っていると、背後から足音が近付いてきた。振り返ると、そこにはちょうど今、思考の中にいた森山が立っていた。


「あれ、飲み物買いに来た?」

「気分転換に」

「そうだよな、大きな案件も一段落したし、今は少し手持ち無沙汰だよな。何飲む?」

「え、買ってくれるんですか?」

「いいよ。ヘルプのお礼」

「わーい、ありがとうございます!」


 愛らしく喜んで、彼女が隣に並ぶ。

 いつも通りに振る舞っているように見えるが、ふとした瞬間の横顔には、どこか硬いものが混じっていた。


(気持ちわりぃ…)


 真広に対して心が揺れ始めている一方で、まだこんな風に森山の些細な表情や機微に敏感に反応してしまう。そんな自分自身の執念深さが、吐き気がするほど気持ち悪くて仕方がなかった。
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