未完の恋、指先で溶かして
 硬貨を入れて森山がボタンを押すのを見ていると、彼女はそっとミルクティーのボタンを選んでいた。

 それから「ありがとうございます」と、笑顔で礼を言ってきたけれど、やはりその表情は硬い。また何か悩んでるな、とはっきりわかる顔をしていた。

 前に、諦める努力をしようと誓ったくせに、俺の意志は弱く、どうしても手を差し伸べたくなってしまう。こんな気は、森山以外には起きない。まだその気になるということは、未だに諦めきれていない証拠なのか。

 そんな気持ちを今は置いて、このまま森山を放置する方が、きっと俺は引きずる。

 ひとまず俺はさりげなく、話を探ってみることにした。


「いいえ。こちらこそありがとう。伊勢も助かったって喜んでた」

「お役に立てて何よりです」

「…ストプラ戻ってきたくなった?」

「へ?」


 彼女は先程の浮かない顔から一転、驚いた表情をしていて、俺は思わず笑ってしまった。相変わらず、表情がころころ変わる。


「浮かない顔してるから、コピーライター上手く行ってないかなあって。俺は大歓迎だよ」

「ち、違いますよ!ストプラも最高でしたが、コピーライターも楽しんでます!」

「じゃあ、プライベートな話?」


 そう問いかけた瞬間、彼女はあからさまに言葉に詰まった。

 本当に、分かりやすい。
< 58 / 69 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop