未完の恋、指先で溶かして
「まずは、素直に嬉しい。ありがとう」


 真広はわかっていたと思う。
 この告白はすんなり通らないということを。

 俺の言葉を聞いても彼女の表情に驚いた様子はなく、硬いままだったから。


「これから最低な話する。幻滅されるような、そんな話」

「え?」

「俺はまだ、森山に気持ちを持ったまま、あの日もあんな風に真広に触れたし、こうやって会ってる今も、どこかでやっぱり森山のことを考えてる」


 一度身体を重ねれば、情が湧くことも、俺自身がそんな勘違いをしてしまうこともわかっていたはず。軽率に関係を進めてしまった、俺の責任だ。

 そして、こういう時の曖昧な言葉や態度を、真広が最も嫌がることも知っていた。だから最低だと思われても構わない。それが、俺なりの真広への向き合い方だった。


「…いつ諦めがつくかもわからない。だから──」


 言葉を紡ごうとした俺を遮るように、真広が「私も諦めないから」と言い放つ。

 驚いて目を見開くと、真広はこちらを真っ直ぐに射抜いていた。


「すぐに好きになってもらえるなんて思ってない。片思いが何だっていうわけ!?」

「ごめん、ごめんごめん。落ち着いて」


 真広の熱に押され、肩を掴んで宥めようとするが、逆にその手を掴み返され、強引に彼女の胸へと押し当てられた。


「は!?」

「佐久間くんに会う度に、いつもこんなにドキドキしてるんだからね!」


 そう勢いよく言い放つ真広に唖然としていた。
 それから、敵わないなと思った。

 真っ直ぐすぎるほどの伝え方が、真広らしかった。何事にも真正面からぶつかる勇気があって、想いを届けることに躊躇わない。

 そんな彼女の勢いに、俺は何も言えなくなって、思わず小さく笑ってしまった。
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