`未完の恋、指先で溶かして
「まず、私と付き合うとこんなメリットがあります!」


 そう宣言して画用紙を一枚めくると、そこには色々と書き込まれていた。

 『めちゃくちゃ尽くす』『料理が得意』、そして一番大きく『顔が良い』と、どんと潔く書かれた文字に、思わず吹き出してしまう。

 そんな程度なら、俺の方がもっと多くの長所を挙げられるんじゃないかなんて、謎の自信が湧いてくるくらいには、俺は彼女のことを知っていた。


「デメリットはこちら」


 『外で気が張ってる分、家では甘えます(佐久間くん限定)』『情緒が不安定になりやすい』『関係が公開できるまで、お忍びデートしかできない』と、書き連ねられた言葉を指さして、真広は「お忍びでも絶対楽しませます!」と、さらにプレゼンを続けていく。

 堂々と歩けないことなんて、別に不満はない。気を遣わなければならない職業なのは、嫌というほど分かっているし、男性ファンの多い彼女のこと。もし交際するなら、そんなことは真っ先に覚悟する。

 真広が流暢に話し続けている姿を見て、俺は違和感を感じていた。大抵、こうして言葉を止めることなく喋り続ける時の彼女は、何かしらの不安を感じている。


「真広」

「ん? 質問?」

「一回ストップして隣に座って」


 そう言うと、真広は気まずそうに画用紙をローテーブルの上へ置き、俺の隣に座った。

 先ほどまであんなに意気揚々とプレゼンしていたくせに、隣に来た瞬間、彼女はしおらしく顔を伏せてしまった。
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