再召喚され全てを失った元聖女は、麗しの騎士団長様の溺愛で絶望から立ち上がる。
***
それから数日間、私は女神様にお祈りをしつつアレン君に文字を教えてもらい、穏やかに生活していた。
「女神様。今日も一日、皆様にご加護をお授けください」
お祈りすると手が温かくなるのも慣れてきて、そのまま祈りを続ける。
ロード様を始め、王国騎士団の皆様にもどうかご加護を。
合わせて心の中でそう祈ると、さらに手の中が温まる。
ふわりとした光は日々大きくなっており、女神様のご加護の力なのだと改めて感じられた。
「セーラさま。今日もぽかぽかです!」
「昨日よりも?」
「はい!」
「そっか。良かった」
アレン君と手を繋ぐと、私の体温を感じ取ってくれて日々温かみが増していると教えてくれた。
セイロン様にそれを告げると、私の魔力を調べてくれた。すると驚くことに、セイロン様から注いでもらった魔力が日ごとに馴染みやすくなっており、少しだけ魔力を維持できるようになっているらしい。
それに驚き、なんとも言えない気持ちが湧いてくる。
セイロン様からは毎日女神様へのお祈りを続けてみてほしいと頼まれ、私もそれに従っている。
そして文字の読み書きに関しても、アレン君の教え方が意外にもものすごく上手で、私はメキメキと語学が上達してきていた。
言葉を覚えれば、魔力がなくてもこの国の人たちと会話ができるかもしれないと思っていたけれど、どちらも解決への道を辿り始めているように思える。
なんとなく、全てがうまく進みすぎているような気がして怖くなるくらいだ。
――そんなある日のことだった。
セイロン様が朝から用事があり、少しだけ魔力を維持して会話に支障がなかったことからミレアとアレン君と一緒に先に女神様にお祈りをすることにした。
「女神様。今日も一日……――っ!?」
いつもならじんわりと温かくなっていくはずの手が、今日は急に痛いくらいの強さで弾かれた。
「セーラ様!」
「セーラさま!」
二人が慌てて駆け寄ってきて、呆然とする私の手をさする。
「セーラ様、今のは一体……」
「わからない。何が起こったんだろう……」
「セーラさま。すごく手が冷たいです」
「そう、ね。どうしちゃったんだろう」
ひとまず部屋に戻ることにして、セイロン様が来るのを待った。
ミレアが伝達をしてくれたからか、セイロン様は割とすぐに来てくれて。
「セーラ様!」
扉を勢いよく開けて入ってきたセイロン様は、
「お身体は大丈夫ですか!? お怪我は!? 痛むところは!?」
いつもの冷静な様子が一変、焦ったように私の手のひらを何度も見つめる。
「セイロン様。大丈夫です。少し手が弾かれたように痛んだだけですから」
「そう、でしたか……。すみません。取り乱しました。状況を伺ってもよろしいですか」
「はい」
順を追ってセイロン様に先ほどのことを伝えると、
「魔力の譲渡前だったから……? それとも、セーラ様の魔力に何か変化が……?」
と呟きながら考えてくれる。
「ひとまず、今日の分の魔力の譲渡を行ってもよろしいですか」
「はい。お願いします」
セイロン様の指先に身を委ねる。しかし、いつものような温かさが身体に入ってこない。
「あ、れ……?」
「セーラ様……これは……」
「どうしたんですか?」
「魔力の譲渡が、うまくいきません」
「え? どういうことですか?」
魔力が譲渡できない……?
昨日まで問題なくできていたのに、どうして急に。
セイロン様も予想外の出来事らしく、
「ミレア! カイエンを呼んできてくれ!」
「は、はい!」
ミレアに指示を出すと焦ったように
「もう一度よろしいですか」
と何度か試してくれる。
だけどいつまで経っても身体は温かくならず、それどころか少しずつ温度を失っていくような気がした。
「どうして……」
「どうしてか、こちらの魔力が全て弾かれています。それだけでなく、譲渡しようとするたびに聖女様の体内の魔力も少しずつ減っているようです」
「そんな……」
その後カイエン様にも試してもらったけれど、どうしてもダメで。
これ以上やると言語理解に必要な魔力も失ってしまいそうな気がして一旦やめることにした。