再召喚され全てを失った元聖女は、麗しの騎士団長様の溺愛で絶望から立ち上がる。
 ミレアに紙とペンがほしいとジェスチャーで伝えると、すぐに持ってきてくれて。そこに覚えたての文字で水がほしいと書いてミレアに見せると、嬉しそうに頷いてすぐに持ってきてくれた。

 そんな私たちの様子を見て、ロード様は一瞬驚いたような表情をして。


「ミレア。ありがとう」


 ミレアに告げると、ロード様が訳して伝えてくれたよう。

 ミレアもまた不慣れなカタコトで


「アリガトウ」


 と伝えてくれて、嬉しくなった。

 その後ロード様はセイロン様から私の状況を全て聞いたようで、悩んでいる様子だった。しかし、すぐに何かを思いついたようにセイロン様と話し合う。

 だけどセイロン様は驚きながら首を横に振り反論しているようで。ロード様もそれにまた言葉を重ねて。

 しばらく二人で話し合ってから、ロード様がこちらをちらりと見る。


「セーラ」


 そして手を握ってくれた。

 話し合いが終わって何かをすることになったのだろう。私なら大丈夫という気持ちで笑顔で頷くと、ロード様も頷いて、私の額に指を当ててくれる。


 ……これは、もしかして。

 ロード様が、私に魔力を譲渡しようとしてくれている……?


 触れた指先が少し震えていて、ロード様も緊張しているのがわかる。身を委ねるようにゆっくりと目を閉じると、ロード様が深呼吸したのが気配でわかった。

 そして、じわりと感じる、熱。


「……!」


 魔力が体内に入り込んでくるじんわりとした感覚と温かさに、思わず目を開けた。

 ロード様と目が合うと、真剣な瞳が大丈夫と告げているようで。それに安心して、もう一度目を瞑る。

 すると、じわりじわりと頭から首にかけて熱を帯び、体温が上がっていく感覚がした。

 それはとても柔らかくて、気持ち良くて。まるでお風呂の湯船に浸かっているような、吐息が漏れてしまいそうなほどの温かさで。

 今までに感じたことのない感覚に、酔ってしまいそうだった。


「……?」

「……セーラ」


 目を開けると、ロード様が探るように私の顔を見てきて。


「……ロード様。私……」


 そう呟いた時に、ぱあっとロード様の顔が明るくなり抱きしめられた。
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