再召喚され全てを失った元聖女は、麗しの騎士団長様の溺愛で絶望から立ち上がる。
「そういえば、この裏に模様が描いてあるんだけど、これはどういう意味なの?」


 宝石が嵌められているゴールドの金具。その裏には、見たことのない模様が描かれていることに昨日気が付いた。

 剣をモチーフにしたような、柔らかい絵のような、マークのような。

 ミレアに見せると、途端にニヤけるように微笑みながら


「そちらはロード殿下の紋様でございます」


 なんて言うものだから、急に恥ずかしくなって顔に熱が集まる。


「ろ、ロード様の紋様?」

「はい。爵位のある男性は皆自身の紋様をお持ちです。通常、ご自身の紋様入りのアクセサリーを贈るのは婚約者や妻に対してですが」

「なっ……!?」


 婚約者!?妻!?


「ふふっ、そこまで驚かなくても。おそらくロード殿下は、それくらいにセーラ様を大切に想っていると伝えたかったのではないでしょうか」


 そんな、びっくりしすぎて空いた口が塞がらない。

 みるみるうちに顔は真っ赤に染まっていくし、信じられなくて何度もネックレスとミレアを見比べる。


「セーラさまは、おうじさまとケッコンするんですか?」


 その隣からアレン君が純粋な眼でこちらを見てくるものだから、私の頭はもうパンクしそうで。


「そ、そんな不敬なこと言ってはいけませんよアレン君! ミレアも! だめ! 恥ずかしい! この話は終わり!」

「ふふっ、かしこまりました」

「ねぇセーラさま、おしえてくださいよ!」


 ニヤけるミレアと、不服そうに私の腕を揺らすアレン君。だけど私は今ミレアに言われたことで頭がいっぱいで、赤く染まる顔を誤魔化すことしかできなかった。


「セーラ様」

「セイロン様」


 顔の赤みがおさまった頃、そのままおやつタイムを楽しんでいると、セイロン様が部屋にやってきた。


「セイロン様もおやついかがですか? 今日は焼き菓子です」

「いえいえ、僕は遠慮しておきます。それよりセーラ様、急なお話ですが、王都の街に興味はおありですか?」

「え、街?」


 本当に急なことで、ぽかんと見つめてしまう。


「実はロード殿下に頼まれておりまして。こちらの神殿に来てからもう月が二度も満月を迎えました。気分転換も兼ねて、セーラ様に王都の街並みを案内してあげてほしい、と」

「そうだったんですか」


 ロード様はどこまで優しいのだろう。ネックレスをくれただけで私は感謝してもしきれないくらいなのに、加えてそんな気遣いまで。

 月が二度も満月を。……そうか。もうここにきてから、一ヶ月も経っていたのか。
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