再召喚され全てを失った元聖女は、麗しの騎士団長様の溺愛で絶望から立ち上がる。
「……わかりました。では次に来た時は、ちゃんとお金を払わせてくださいね」


 と言っても、私のではなくてロード様のお金だけど。


「またいらしていただけるのですか!? あぁ女神様! 今日はなんと幸せな日でしょう!」


 ありがたく包みを受け取ると、大袈裟なくらいに頭を下げて見送ってくれた。


「セイロン様。お金を払わせてもらえませんでした」

「ふふ、予想の範囲内です。僕があの露店の店主だったとしても、同じことを言ったと思いますよ」

「そうなんですか? 物を買ったら対価を払うのは当たり前では?」

「それだけこの国の王族は特別なんです。それに、ロード殿下の紋様ですから」


 含みのある言い方に首を傾げると、セイロン様は小声で教えてくれる。


「ロード殿下は今まで婚約者もおらず、浮いたお話がほとんどありませんでした。もちろん、女性に自らの紋様入りのものをプレゼントするなど、僕が知る中ではセーラ様が初めてです。そんな貴重な紋様をお持ちの方に、誰がお金を請求できましょうか」

「っ……!」


 思わず口元を手で押さえながらセイロン様を見ると、どこかにやけているような嬉しそうな表情と目が合う。


「私が、初めて?」

「僕の知る限りは、です」

「そうじゃない可能性は?」

「……僕は幼い頃から殿下のことを存じております」


 にっこりとした微笑みが全ての答えのような気がして、みるみるうちに顔が赤くなる。

 ロード様の紋様入りのものをプレゼントされたのは、私だけ?どうして?


「それほど、セーラ様は殿下に大切に想われているんですよ」


 ミレアと同じことを言うから、言葉を失ってしまう。

 確かに以前の召喚の時からロード様とは親しくしていたし、今回も何度も助けていただいた。

 ロード様がいなかったら、今こうして笑いながら外を歩くこともできなかっただろうし、一人孤独に生きていたかもしれない。


「……私、ロード様に何かお礼がしたいです」


 セイロン様に告げると、


「では、その分は僕が支払いしましょうか?」


 当たり前のようにそう提案してくれる。


「……いいんですか?」

「もちろん」


 本当は自分で払いたいけれど、お金がないからどうすることもできない。だからってロード様のお金でロード様へのお礼を用意するわけにもいかないから、正直ありがたい。

 それにしても、どうせ一年間はここにいるんだからそろそろお金を稼ぐ方法でも考えてみようか。

 そう思いながら再び歩き出し、その後もたくさんのお店をまわった。
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