再召喚され全てを失った元聖女は、麗しの騎士団長様の溺愛で絶望から立ち上がる。

魔獣

「セーラ様!」

「ミレア……」

「セーラ様! すぐにお部屋へお入りください!」


 しばらくそのままでいると、神殿の中からミレアが走ってきて私を神殿の中へ連れていく。


「ミレア、セイロン様が」

「はい、全てセイロン様からの通信で聞いております。神殿の中は安全なため、決してここから出ないようにと仰せでした」

「いったい何があったの……?」

「……王都の外れで、濃い瘴気が観測されました。そこから、魔獣が生まれたとの報告があります」

「魔獣!?」


 魔獣って、今ロード様が戦いに行っている原因の、あれ?


「ミレア、私魔獣ってよくわからないんだけど、どんなものなの?」

「そうですね……簡単に言えば、獣のような見た目でその中身は瘴気で満たされているものです」

「瘴気で?」


 聖女として働いていた頃、瘴気を浄化していたからそれがどんなものかは知っている。空気が澱み、重苦しくなる。空まで黒いモヤが覆い尽くし、太陽の光すらも遮ってしまうものだ。


「はい。しかし問題なのは、その魔獣に攻撃されたり噛まれたりすると、そこから体内に瘴気が入り込んでしまうということです」

「それ、は。体内に入るとどうなるの?」

「身体が毒に侵されたかのように痛んだり、動けなくなったり。高熱が出て苦しむ症状が一般的でしょうか。最悪の場合、命を落とすこともあります」

「そんな……」


 人の命を奪いかねない魔獣が、王都の街に……!?


「私……セイロン様……どうしようっ、どうしようミレア!」

「大丈夫です。セーラ様。セイロン様は大神官としても偉大なお方ですが、剣の心得もあると聞きます。セーラ様がいらっしゃる前にはロード殿下とともに魔獣の討伐に向かったこともあるそうです。だからどうか、心配なさらずにお戻りになるのを待ちましょう」

「ミレア……」


 ミレアに頷き、ひとまず部屋に戻る。

 ミレアにはゆっくり休んでと言われたけれど、そんなことできるわけもない。

 神殿の中では神官たちがバタバタと走り回っているようで、いつもと違って不安が募っていく。

 どうしよう。私にできることは? でも、私はもう魔力を失っているから聖女として働くことはできない。


 ……本当に?


 毎日、欠かさずに女神様にお祈りをしている。ロード様からいただいた魔力はネックレスのおかげもあり安定していて、宝石に魔力を込めることだってできた。

 聖女としての力は、魔力が源だったはず。

 魔力自体はロード様からいただいたものだけど。もしかしたら。瘴気を少しでも浄化することができるのではないだろうか。
< 40 / 110 >

この作品をシェア

pagetop