再召喚され全てを失った元聖女は、麗しの騎士団長様の溺愛で絶望から立ち上がる。
「……ミレア! ミレア! いる!?」

「なんでしょうセーラ様!」

「お願いがあるの!」


 ミレアに、思いついたことを伝える。しかし、ミレアはすぐに首を横に振った。


「なりません! 魔獣の地に行くなど、絶対にいけません! セイロン様も仰っておりましたでしょう! セーラ様は神殿から一歩も外に出てはいけません。ここが一番安全なのです!」

「でも! もしかしたら私に何かできるかもしれない!」

「……仮にそうだとしても、私はセイロン様に拾っていただいた身。セイロン様の言い付けを破ることは、例えセーラ様でも目を瞑ることはできません」

「ミレア……」


 苦しそうに呟くミレアを見て、こんなに不安なのは私だけではないことに初めて気が付いた。

 ミレアだって不安なんだ。当たり前だ。セイロン様が一人で魔獣のところに向かっている。不安に決まってる。怖いに決まってる。だけど、その気持ちを押し込んで私を励ましてくれた。その気持ちを、私は。


「……ミレア、ごめんね。私、自分のことばっかりで……」

「セーラ様。違います。セーラ様はお優しいのです。ご自身のことでいっぱいいっぱいになってもおかしくない状況なのに、街のことまで案じて、セイロン様の御身を心配なさって」

「……だって、私は何もできないから」


 守られてばかりで、何もできない。

 一年間をどう凌ぐかしか考えていなくて。日本に戻った時どうなるかを不安がってるだけで。言葉が通じれば嬉しくて、ロード様のご無事を祈って。


「私は優しくないの。全然。優しくない。自分のことばっかり考えてて、周りが全く見えていなかった」


 確かに私は、一回目の召喚の時にこの国に利用された。そのせいでお母さんとの別れも経験した。だけど、聖女としての達成感があったのも事実だ。

 聖女としての仕事に誇りを持ち、国民の方達のために必死で祈って。それしかできなかったというのもあるけれど、今より子どもだったのに、確かに今より周りが見えていたと思う。

 だけどこの有様はどうだろう。もう利用されたくないから。お母さんとのつらい別れの原因となったから。魔力を失っていて何もできなかったから。それはそうだけど、自分のことばかり考えて、悲劇のヒロインを気取って。

 この国には今瘴気で困っている人がいる。魔獣に襲われている人がいる。それなのに、私は女神様に祈るだけで何もしてこなかった。
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