再召喚され全てを失った元聖女は、麗しの騎士団長様の溺愛で絶望から立ち上がる。
「ミレア、お願い。私、このままじゃ絶対に後悔する。私も、できることをやりたいの」


「……お気持ちはわかります。でも……」


 口籠るミレアに、ぎゅっと拳を握る。


 ……本当はこんなこと、言いたくないけれど。


「っ、ミレア! あなたは確かにセイロン様に拾ってもらったかもしれない! だけど。……今あなたが仕えているのは、いったい誰!?」

「……ドラムトン王国における偉大なる聖女、セーラ様にございます」


 ミレア、ごめんね。こんな方法しかできない私を、どうか許して。


「その私が! セーラが! 聖女として行くと言っているの! 確かに、魔力を失った私が役に立てる保証なんてない。だけど、やってみないとわからないじゃない!」

「……っ」

「……ミレア、これは命令よ。……私が行くことを、今すぐ許可しなさい!」


 そう声を張り上げた時、ミレアの瞳が大きく揺れたように見えた。




***

「……セーラ様」

「……」


 ごくりと唾を飲み込み、ミレアの答えを待つ。

 手が震える。足もガクガクする。

 命令なんて言葉、人生で初めて口にした。一生口にすることはないと思っていた。

 ミレアにどう思われただろうか。嫌われてしまっただろうか。怖くてたまらない。だけど、それ以上に今は魔獣をどうにかしないといけないから。

 心を強く持って、もう一度拳を握り直して。目を瞑って、深呼吸をして。また目を開いて、じっとミレアを見つめる。

 しばらくミレアは黙っていたけれど、意を決したように深く息を吐き。そして。


「……セーラ様には、本当に敵いませんね」


 そう言って小さく笑った。


「ミレア……」

「……そこまで言われてしまったら、致し方ありません。主であるセーラ様のご意向に従います」

「ありがとう!」

「ただ! ……条件があります」

「条件?」


 聞き返すと、ミレアはゆっくりと頷く。


「はい。今現在、この大神殿には魔獣の被害や瘴気の被害に遭った民が続々と運ばれてきています。セイロン様の元へ行く前に、その方たちの浄化をお願いします。それができなければ、セイロン様の元へは行かせられません」

「……わかった!」


 ミレアに頷き、一緒に部屋を出て走り出す。


「その方達は今どこにいるの!?」

「この居住地の反対側にある処置室です!」


 案内された場所に向かうと、そこはまさに地獄図のようだった。


「これは……」

「カイエン様!」

「ミレア。……セーラ様!?」


 浄化にあたっていたカイエン様が走ってきて、ミレアが事情を説明してくれる。


「セーラ様……本当、あなたという人は」

「ごめんなさい。ミレアを責めないで。全て私のわがままだから」

「……承知しました。では、浄化をお願いしてもよろしいですか」

「……わかりました!」


 頷いたと同時に、私は近くにいた女性の元へ走り出した。
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