再召喚され全てを失った元聖女は、麗しの騎士団長様の溺愛で絶望から立ち上がる。
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浄化

「うっ……っ」

「大丈夫ですか? どこが痛みますか?」

「あ、あし……」

「足ですね? 少し服をめくりますよ!」


 呻き声を上がる女性の服の裾をめくると、そこは青黒く変色していた。


「っ……これはひどい……」


 そう呟くけれど、後ろからミレアが


「こちらの方は軽症です。この程度で狼狽えてはいけませんよセーラ様」


 と叱ってくれるから、私も気を引き締める。


「そうよね。ごめんなさい。……奥様、少し身体の力を抜けそうですか?」


 ふるふると首を横に振る女性に頷いて、私は患部に向かって手をかざす。


「わかりました。では少しじっとしていてください。ミレア、足を抑えてくれる?」

「かしこまりました」


 浄化は、聖女として何度も行ってきたためその方法は心得ている。

 あとは、うまく魔力が作用してくれるかどうかだ。


「……浄化」


 頭の中でイメージを固めて、呟く。

 すると、小さな淡い光が手から患部に向かって広がる。


「っ……まだ弱い。これじゃ全然……」


 しかし、光が弱すぎてすぐには浄化しきれない。

 時間をかけて患部を浄化し終わると、女性の顔色は幾分かマシになったように見えたホッとした。


「セーラ様、まだ始まったばかりです。次の方に参りましょう」

「うん」


 その後数人の方を浄化したものの、やはり力が弱くてうまく力が出せない。

 頭の中ではいい具合にイメージできているし、魔力が血液をめぐる感覚もなんとなくわかってきた。そこから抽出する方法も、凝縮する方法も。

 今ならもっと早く、もっと強く浄化できる気がするのに。どうして。

 そのまま一人、また一人と浄化を施していくものの、やはり何かが引っ掛かっているような気がした。


「どうして力が一定しか出せないの……!?」


 焦ってしまってそう声を荒げる私に、ミレアは何か思い出したように呟いた。


「セーラ様、もしかしてそのネックレスが原因では?」

「……え?」

「そのネックレスは魔力を一定に保つもの。もしかしたら、その影響があるのかも」


 胸に下がるネックレスに触れる。

 そうか。その可能性もあるのか。……だったら。


「ミレア、これ持ってて!」

「はい!」


 ネックレスをグッと引っ張って引きちぎり、ミレアに渡す。

 そして深呼吸をしてから、もう一度浄化を施した。


「……浄化!」


 すると、最初はやはり光が淡かったものの、徐々に大きく強く輝いていく。


「……もっと、早く。もっと、強く」


 患部に集中して、魔力を注いでいく。あっという間に浄化ができ、目の前の男性の呼吸が落ち着いていく。


「セーラ様、すごいです!」

「うん……うん! できた!」

「体調は大丈夫ですか?」

「うん、むしろ今はなんだか力がみなぎってるみたい!」

「良かった! では次の方の元へ参りましょう!」


 身体の奥底から、力が溢れ出てきているような。

 もしかして、ネックレスの影響で魔力があまり増えないように抑えられていた?

 わからないけれど、今はそんなことはいい。

 とにかく目の前のことに集中しないと。

 私は、ミレアを連れて次から次へと運ばれてくる方達を浄化し続けた。
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