再召喚され全てを失った元聖女は、麗しの騎士団長様の溺愛で絶望から立ち上がる。

救世主

「ミレア、あなたは下がってて」

「はいっ……」


 ミレアに下がらせ、私は意識を集中させて源を探す。

 瘴気には放出元が必ずある。そこから広がっているため、その源を浄化すれば少なくとも魔獣が出ることも瘴気が広がることもなくなるはず。


「どこ……どこなの……」


 あまりに瘴気が濃くて、なかなか源が見つからない。その間も魔獣は発生し続けていて、セイロン様や神官たちが浄化をしながら戦っている。

 早く、早く見つけないと。

 グッと瞑る瞼に力を入れて、さらに神経を研ぎ澄ませる。……すると、ぼんやりとした空気の中に一点だけ強い気配を感じて目を開いた。


「……見つけた! ……浄化!」


 瘴気の源に向かって浄化を放つ。強い光が細い線のようになり、源に向かって一直線に刺さる。キン、という音が響いたかと思うと、そこから光が当たりを包み込み思わず目を瞑った。


「……っ、あ、れ」


 目を開くと、瘴気はほとんど薄まっているようで。さっきまで暴れていた魔獣の姿も無く、セイロン様が肩で息をしながらゆっくりと当たりを見回していた。


「ははっ……さすが、聖女様だ……」


 感心したような声に、私は安心して一気に身体の力が抜ける。


「セーラ様!」


 ミレアがすんでのところで支えてくれて、倒れずに済んだ。


「ミレア、わたし……」

「はい、セーラ様。浄化しました。瘴気のほとんどを、セーラ様のお力で浄化いたしました!」


 両手を見ると、まだ小刻みに震えていた。

 握りしめようと思っても、うまく力が入らずに震えが止まらない。


「セーラ様、ネックレスをすぐに!」

「う、うん……」


 引きちぎって壊れてしまったネックレスを、手に乗せて包み込む。

 気が付けば手だけでなく全身が震えていて、今さらとんでもないことをしてしまったと恐怖心が募る。

 そんなこと考えている余裕もなかった。ただ必死で。無我夢中で。


「……セーラ様。本当にありがとうございます。セーラ様のおかげで、被害が最小限に済みました」

「セイロン、様。私……」

「おやおや、さっきまで僕に叫んでいらした人とは思えませんね」


 震える私をセイロン様がからかってきて、ミレアも私を支えながら小さく笑う。

 だけどそんなミレアをギロっと睨むセイロン様。その口元は微笑んでいるのに、目は全く笑っていないから余計に怖い。

「……ミレア、説教は戻ってから。覚悟はいいな?」

「……仰せのままに」

「ちょ、ちょっと! ミレアは悪くないって言ってるじゃないですか! 私が命令したんです!」

「そのお言葉はお聞き入れできません。ミレアが仕えているのは確かにセーラ様ですが、ミレアとアレンは僕の管理下。命令を守れなかった者には罰則を設けなくては、他の者に示しがつきませんからね」

「セーラ様。殺される覚悟の上でここにきたと言ったでしょう。お気遣いは無用です」

「ミレア……!」


 そのまま残りの瘴気は神官たちが浄化するとのことで、私はセイロン様とミレアと共に、転移魔法で戻ろうと目を瞑る。

 しかしその瞬間、薄まったはずの瘴気から轟音が響き。


「なに……!?」

「セーラ様! 伏せて!」

「うっ……!?」


 セイロン様の声にミレアが私に覆い被さって来たと同時に、何かが目の前まで迫った音。そしてセイロン様が弾き飛ばされる声。

 ミレアの腕の隙間から目を開くと、真っ黒な獣がすぐそこにいて。今にも私たちを襲おうと口を開き、鋭い牙が顔を出す。


「あ……」


 コロサレル。


 一瞬で命の終わりを理解して、あまりの恐怖に言葉を失った。

 しかし次の瞬間。


「――セーラ!」


 その声と共に、目の前の獣の首が転がっていく。


「ひっ……」


 その光景に悲鳴をあげた直後。


「セーラ! 無事か!?」


 深い青色の瞳が私を捉えた瞬間、私はそのまま気を失ってしまったのだった。

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