再召喚され全てを失った元聖女は、麗しの騎士団長様の溺愛で絶望から立ち上がる。
「先日、魔獣を初めて見ました。どの地域にもあんな恐ろしい魔獣が?」

「いや、あんな大きくて凶暴な個体はなかなか出ないよ。他の地域はみんな小さくて人に噛みつくくらいだ」

「そうなんですか……」

「だからセーラが襲われそうになっているところを見て驚いた。本当に間に合って良かった」


 だからセイロン様も油断したと言っていたのか。


「あの時、直前に瘴気を浄化したんです。かなり薄まっていたからあとは神官たちの浄化で十分だと言われて。神殿に帰ろうとしていたら、いきなりあの魔獣が飛び出してきました」

「薄まった瘴気からあんな個体が出ることすらおかしいとは思っている。新たに瘴気が広がっている場所の報告は今のところ無く落ち着いてはいるが……。何か、良くないことが起こりそうな気がするな」


 違和感を覚える魔獣。前回とは違う、瘴気の広がり方。


「……私は、やはり聖女として各地域の浄化に行くべきですよね」


 ぽつりとこぼすと、ロード様が私をじっと見つめる。


「……やっぱり悩んでるのか?」

「え?」

「表情がどこか暗いのがずっと気になってた」

「……」


 こんなに助けてもらっているのに、さらに相談までしたら迷惑ではないか。

 慌てて言葉を飲み込もうとしたけれど、ロード様が


「言いたくないならいい。けど、セーラが一人で抱え込んでいる姿は見たくないんだ」


 と、テーブルの向こうから身を乗り出して私の頭を撫でてくれる。


「セーラの悩みを完全に理解することは難しいだろう。今まで生きてきた環境も違い、今置かれている立場も違う。だけど、俺にだって話を聞くくらいのことはできる。セーラの悩みを一緒に考えることくらいはできるよ」

「ロード様……」


 そのタイミングでリゼが紅茶を用意してくれて、私たちの前にクッキーと一緒に置いてくれた。


「ちょうどいい。リゼもここに座れ」

「……はい」

「セーラ。俺とリゼに話してみないか? もしかしたら、何か力になれるかもしれないだろう」

「セーラ様。力不足ではありますが、ぜひお聞かせください。私もセーラ様のお役に立ちたいです」


 二人にそう言ってもらえて、顔を上げる。


「でも、自分でも頭の中が整理できてないから、話がめちゃくちゃですよ」

「だからこそだよ。話すことで整理できるかもしれない。新しい視点が見つかるかもしれないだろ?」


 ロード様の微笑みに、少し勇気をもらう。


「……では、聞いてもらえますか。元の世界に戻った日のことと、それからここに来るまでの期間のこと」

「あぁ」


 私は、二人に全てを話してみることにした。
 
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