再召喚され全てを失った元聖女は、麗しの騎士団長様の溺愛で絶望から立ち上がる。
*****

過去からの悩み

「ロード様には以前、お伝えしたことがありましたよね。前回の召喚の時、元の世界に戻ったら何故か時間がズレていたと」

「あぁ。こちらでは三年だが、向こうではもっと年数が経っていると言っていたな」

「はい。実は私が元の世界に戻った日、こちらでは一年しか経っていなかったのに、向こうではすでに七年が経過した後でした」


 前提として話すと、目を見開くロード様。


「七年……」

「はい。その際に、何故か身体も勝手に成長した姿に変わっていました。……十五歳で元の世界に戻ったはずなのに、一瞬で二十一歳の世界に戻ってしまったんです」


 今度こそ驚いて言葉を失う二人に、私は続けた。


「私の住む国は日本と言います。日本では、戸籍と呼ばれるその人個人が生きている証明のようなものが存在します。亡くなるとそう記載される、名簿のようなものです。私はその戸籍上、"すでに死んだ人間"として扱われていました」

「え……?」

「どうして、ですか?」

「私は当時、行方不明という扱いになっていました。だけど、一度行方不明になってから数年しても見つからない場合、死んでしまった可能性が高いとして、申請すればそのように処理されてしまうんです」


 二人に、私は順を追って説明をした。

 会ったこともない遠縁の誰かが勝手に申請して、死亡扱いになっていたこと。そうなると、まず自分の身分を証明できないこと。戸籍を取り戻すのにとても苦労したこと。


「でも、セーラは確か母親が待っているって言っていたよな? その母親がいたのに、遠縁の者が勝手に?」

「……母は、その七年の間にすでに亡くなっていました」

「っ……!?」

「私、母の死に目にも会えなかった。それどころか、身体を悪くして病気がちだった母をひとりぼっちにしてしまった。その間、私はこっちの世界で必死に働いて。寂しい思いをさせて、ものすごい心配をかけて。たくさん探してもらったんだと思うんです。新聞にも載ったって言っていました。誘拐されたんじゃないかとか、家出したんじゃないかとか。母のせいなんじゃないかって言われたことも何回もあったみたいです」


 私の行方不明事件は、当時ニュースで大々的に報じられたらしい。

 女子中学生の失踪事件。他に特別報道するようなニュースがなかったらしく、連日報道されていた。

 献身的に母親の看病をしていた中学生。部活も習い事もできず、学校と家との往復の日々。

 実は嫌だったんじゃないか。疲れてしまって逃げたくなってしまったんじゃないか。そんな憶測が憶測を呼び、お母さんは世間からの大バッシングにさらされた。母親が悪い。母親のせいだ。頼るのは娘ではないだろう。そんな誹謗中傷が相次いだ。

 それが大きなストレスになり、身体に負担がかかってしまった。そして病気が悪化してしまい、そのまま。
< 55 / 110 >

この作品をシェア

pagetop