再召喚され全てを失った元聖女は、麗しの騎士団長様の溺愛で絶望から立ち上がる。
「王妃は隣国の王族出身でな。一応わしの遠縁にあたる存在だ。そんな王妃は今でこそ落ち着いているが、昔から身体が弱くてな。三人の息子を産んだ後はしばらく部屋から出られなかった」
「……ロード様から、こちらの庭園は王様が王妃様のためにとお造りになったと伺いました」
「そうだ。あの頃は心配で王宮の外に満足に出してあげられず、精神的にも無理をさせてしまっていたからな。少しでも王妃を元気付けたかったんだ」
「それを聞いて、王様はとても心優しいお方なんだなと思っておりました」
王妃様をとても大切になさっていて、この国のことを愛していて。
王様として、とても素晴らしい方なんだろうなと感じていた。
「……そうでもない。わしは昔から間違いばかりで、王妃にも臣下たちにも国民にも。本当に迷惑をかけた」
「そうだったのですか?」
「あぁ。政はあまり得意ではなくてな。何がこの国のためになるのかわからず、日々模索していた。そなたを召喚したのも、今思えばそのうちの一つだった」
「私を?」
思わず伺うと、しゃがみこんでお花を見ながら微笑む王様。
「国に原因不明の瘴気が突然現れた時に、その広がる速さに呆然としてしまってな。神官たちが浄化を進めていてくれたんだが、追いつかずに広がっていく一方だった」
花びらを手で撫でる王様は、当時を思い返している様子だった。
「どうしたものかと臣下たちと会議をしても解決策など出るわけもなく。……そんな時に、過去に読んだ国史を思い出したんだ」
「……国史ですか?」
「あぁ。国史には、遥か昔に今と同じように国に瘴気が広まった記録があったんだ」
「遥か昔って……!?」
そんな昔に、同じことが?
「当時も原因不明の疫病が蔓延し、畑や草花は枯れ落ち魔獣が姿を現した。その際に召喚魔法を唱え、舞い降りてきた聖女が国の危機を救ったのだ、と」
「それって……」
「あぁ。まさにセーラ、そなたと同じように召喚された存在が、過去にもいたということだ」
私のような人間が、他にも。
「それを読み、直ちに実行しようとした。召喚魔法には膨大な魔力量が必要だからか、それ以降は他に唱えた者の記録はなかった。だから半分賭けのようなものだった」
ゆっくりと立ち上がった王様は、深く刻まれた皺を濃くして、私に微笑む。
「……それが三年前のあの日。そなたが召喚された時のことだ」
それが三年前の。日本では、十年前のできごと。
「それからはそなたの方がよく知っているだろう。そなたはよくやってくれた。突然召喚し家族と離れ離れになったのにも関わらず、その務めを立派に果たしてくれた。十分すぎるほどにな」
「私は……ただ、与えられた役目をこなすことしか頭になく、必死でした」
「そうだ。故郷でもなく、初めてきた土地だ。それなのに、そなたは必死になってくれたんだ。我がドラムトンのために、必死で戦ってくれたのだ。それが、本当に嬉しかった」
目を細めながら天を仰ぐ王様は、どこか複雑に感情が入り混じったような表情をしているようだった。
それは後悔、誇り、愛、やるせなさ、諦め、そして希望のように見える。
「……ロード様から、こちらの庭園は王様が王妃様のためにとお造りになったと伺いました」
「そうだ。あの頃は心配で王宮の外に満足に出してあげられず、精神的にも無理をさせてしまっていたからな。少しでも王妃を元気付けたかったんだ」
「それを聞いて、王様はとても心優しいお方なんだなと思っておりました」
王妃様をとても大切になさっていて、この国のことを愛していて。
王様として、とても素晴らしい方なんだろうなと感じていた。
「……そうでもない。わしは昔から間違いばかりで、王妃にも臣下たちにも国民にも。本当に迷惑をかけた」
「そうだったのですか?」
「あぁ。政はあまり得意ではなくてな。何がこの国のためになるのかわからず、日々模索していた。そなたを召喚したのも、今思えばそのうちの一つだった」
「私を?」
思わず伺うと、しゃがみこんでお花を見ながら微笑む王様。
「国に原因不明の瘴気が突然現れた時に、その広がる速さに呆然としてしまってな。神官たちが浄化を進めていてくれたんだが、追いつかずに広がっていく一方だった」
花びらを手で撫でる王様は、当時を思い返している様子だった。
「どうしたものかと臣下たちと会議をしても解決策など出るわけもなく。……そんな時に、過去に読んだ国史を思い出したんだ」
「……国史ですか?」
「あぁ。国史には、遥か昔に今と同じように国に瘴気が広まった記録があったんだ」
「遥か昔って……!?」
そんな昔に、同じことが?
「当時も原因不明の疫病が蔓延し、畑や草花は枯れ落ち魔獣が姿を現した。その際に召喚魔法を唱え、舞い降りてきた聖女が国の危機を救ったのだ、と」
「それって……」
「あぁ。まさにセーラ、そなたと同じように召喚された存在が、過去にもいたということだ」
私のような人間が、他にも。
「それを読み、直ちに実行しようとした。召喚魔法には膨大な魔力量が必要だからか、それ以降は他に唱えた者の記録はなかった。だから半分賭けのようなものだった」
ゆっくりと立ち上がった王様は、深く刻まれた皺を濃くして、私に微笑む。
「……それが三年前のあの日。そなたが召喚された時のことだ」
それが三年前の。日本では、十年前のできごと。
「それからはそなたの方がよく知っているだろう。そなたはよくやってくれた。突然召喚し家族と離れ離れになったのにも関わらず、その務めを立派に果たしてくれた。十分すぎるほどにな」
「私は……ただ、与えられた役目をこなすことしか頭になく、必死でした」
「そうだ。故郷でもなく、初めてきた土地だ。それなのに、そなたは必死になってくれたんだ。我がドラムトンのために、必死で戦ってくれたのだ。それが、本当に嬉しかった」
目を細めながら天を仰ぐ王様は、どこか複雑に感情が入り混じったような表情をしているようだった。
それは後悔、誇り、愛、やるせなさ、諦め、そして希望のように見える。