再召喚され全てを失った元聖女は、麗しの騎士団長様の溺愛で絶望から立ち上がる。
「ロード様。王様への報告、代わりに行ってくださってありがとうございます」
「あぁ、全然気にしないで。俺が勝手にしてるだけだし。それより、体調は?」
「ふふっ、セイロン様と同じこと聞いてる。昨日より楽ですよ」
「そうか、良かった」
反応まで同じで笑ってしまう。
ロード様はそのまま近くにいたリゼに下がらせ、私が横になっているベッドに腰掛けた。
「王様が褒めていたよ。セーラはやっぱり立派だって」
「そんな。恐れ多いですね」
「それだけセーラが頑張ってる証拠だよ。セーラが浄化を始めるようになって、今までより何倍も早く瘴気の影響が減ってきてるんだから」
「……ありがとうございます」
私は王様と約束した手前、必死にやっているだけだ。それが結果的に国を助けることになり、みんなのためになっているのであれば嬉しいと思う。
この大役を、引き受けて良かったと思える。
「そうだ、さっきセイロン様にロード様から魔力を譲渡してもらうように言われていたんでした」
「あぁ、それもそうだな。今やってもいいか?」
「はい。お願いします」
目を閉じると、ロード様がそっと私の額に指を触れて。そこから少しずつ、魔力を流してくれる。
……あぁ、温かい。柔らかくて気持ちの良い魔力が、身体に染み込んでいく。
久しぶりの譲渡してもらう感覚に、頭が蕩けてしまいそうだ。
「セーラ?」
譲渡が終わってもしばらくボーッとしてしまい、虚な目で天蓋を見つめる。
すると何を思ったか、ロード様は私の頬に手を添えて、そのまま親指で頬を撫でていく。
「……ロードさま……?」
ぽつりと名前を呼ぶと、ピク、と指が止まるけれど、すぐにまた撫でてきて。
視線だけロード様に向けると、いつもとは違う、とても切ないような、愛おしいような。そんな視線が私を貫いていて。はぐ、と息を呑む。
ドキドキと高鳴る胸の音が、頭まで響いて。きっと、頬に手を触れているロード様にも気づかれていると思った。
……どうしてそんな顔をするの?
聞きたいけれど、うまく言葉にすることができなくて見つめ返すことしかできない。
「セーラ」
「……」
「……浄化が終わったら」
浄化……? それが、終わったら、なに?
「やっぱりセーラは、向こうに帰ってしまうのか……?」
ロード様の悲痛な声が。表情が。
しばらく、私の頭から離れてはくれなかった。
「……悪い。忘れてくれ」
それだけを言って部屋から出て行ってしまったロード様。すぐに入れ替わるように不思議そうな表情をしたリゼが入ってきて。
「セーラ様? ロード殿下の様子が……どうかされましたか?」
「ううん……なんでもないの」
「そうですか? ならいいですけど……」
ロード様のさっきの言葉はなんだったのだろう。
浄化が終わったら、元の世界に。
それは、そうだろう。だって、私は元々この世界の人間ではないのだから。
歴史上、存在してはいけない存在なのだから。浄化のためだけにいる聖女。自分の仕事が終わったら、日本に帰るのは当たり前のことで。みんなもそう、望んでいるはずで。
……望んでいる、はずで。
ふとそう考えてから、みんなって誰だろう。そう思って思考を一旦止める。
当たり前のように日本に帰るものだと思っていたけれど、また時間の流れに歪みが出る可能性もあるし、また日本で私は死んだ人間として扱われている可能性がある。
身内もいない世界に、私が帰る意味はあるのだろうか。
そこまで考えて、なんだか頭が痛くなってきたような気がした。
「リゼ」
「はい」
「少し眠るわ。ロード様から魔力は譲渡してもらったから、セイロン様が戻ってきたらそう伝えておいてくれる?」
「かしこまりました。ごゆっくりお休みください」
「ありがとう。おやすみ」
「おやすみなさい」
リゼの優しい声を聞いて、目を閉じる。
終わった後どうするかはまた今度考えるとして。今は、まず目の前のことに集中しないと。
早く浄化をしに行けるように、しっかり休んで体力と魔力を回復させる。それが、今の私のやるべきことだ。
そのまま眠りに落ちると、懐かしい夢を見た。
「あぁ、全然気にしないで。俺が勝手にしてるだけだし。それより、体調は?」
「ふふっ、セイロン様と同じこと聞いてる。昨日より楽ですよ」
「そうか、良かった」
反応まで同じで笑ってしまう。
ロード様はそのまま近くにいたリゼに下がらせ、私が横になっているベッドに腰掛けた。
「王様が褒めていたよ。セーラはやっぱり立派だって」
「そんな。恐れ多いですね」
「それだけセーラが頑張ってる証拠だよ。セーラが浄化を始めるようになって、今までより何倍も早く瘴気の影響が減ってきてるんだから」
「……ありがとうございます」
私は王様と約束した手前、必死にやっているだけだ。それが結果的に国を助けることになり、みんなのためになっているのであれば嬉しいと思う。
この大役を、引き受けて良かったと思える。
「そうだ、さっきセイロン様にロード様から魔力を譲渡してもらうように言われていたんでした」
「あぁ、それもそうだな。今やってもいいか?」
「はい。お願いします」
目を閉じると、ロード様がそっと私の額に指を触れて。そこから少しずつ、魔力を流してくれる。
……あぁ、温かい。柔らかくて気持ちの良い魔力が、身体に染み込んでいく。
久しぶりの譲渡してもらう感覚に、頭が蕩けてしまいそうだ。
「セーラ?」
譲渡が終わってもしばらくボーッとしてしまい、虚な目で天蓋を見つめる。
すると何を思ったか、ロード様は私の頬に手を添えて、そのまま親指で頬を撫でていく。
「……ロードさま……?」
ぽつりと名前を呼ぶと、ピク、と指が止まるけれど、すぐにまた撫でてきて。
視線だけロード様に向けると、いつもとは違う、とても切ないような、愛おしいような。そんな視線が私を貫いていて。はぐ、と息を呑む。
ドキドキと高鳴る胸の音が、頭まで響いて。きっと、頬に手を触れているロード様にも気づかれていると思った。
……どうしてそんな顔をするの?
聞きたいけれど、うまく言葉にすることができなくて見つめ返すことしかできない。
「セーラ」
「……」
「……浄化が終わったら」
浄化……? それが、終わったら、なに?
「やっぱりセーラは、向こうに帰ってしまうのか……?」
ロード様の悲痛な声が。表情が。
しばらく、私の頭から離れてはくれなかった。
「……悪い。忘れてくれ」
それだけを言って部屋から出て行ってしまったロード様。すぐに入れ替わるように不思議そうな表情をしたリゼが入ってきて。
「セーラ様? ロード殿下の様子が……どうかされましたか?」
「ううん……なんでもないの」
「そうですか? ならいいですけど……」
ロード様のさっきの言葉はなんだったのだろう。
浄化が終わったら、元の世界に。
それは、そうだろう。だって、私は元々この世界の人間ではないのだから。
歴史上、存在してはいけない存在なのだから。浄化のためだけにいる聖女。自分の仕事が終わったら、日本に帰るのは当たり前のことで。みんなもそう、望んでいるはずで。
……望んでいる、はずで。
ふとそう考えてから、みんなって誰だろう。そう思って思考を一旦止める。
当たり前のように日本に帰るものだと思っていたけれど、また時間の流れに歪みが出る可能性もあるし、また日本で私は死んだ人間として扱われている可能性がある。
身内もいない世界に、私が帰る意味はあるのだろうか。
そこまで考えて、なんだか頭が痛くなってきたような気がした。
「リゼ」
「はい」
「少し眠るわ。ロード様から魔力は譲渡してもらったから、セイロン様が戻ってきたらそう伝えておいてくれる?」
「かしこまりました。ごゆっくりお休みください」
「ありがとう。おやすみ」
「おやすみなさい」
リゼの優しい声を聞いて、目を閉じる。
終わった後どうするかはまた今度考えるとして。今は、まず目の前のことに集中しないと。
早く浄化をしに行けるように、しっかり休んで体力と魔力を回復させる。それが、今の私のやるべきことだ。
そのまま眠りに落ちると、懐かしい夢を見た。