再召喚され全てを失った元聖女は、麗しの騎士団長様の溺愛で絶望から立ち上がる。
***

「世羅。ごめんね。また心配かけて」

「……おかあ、さん?」

「そうよ? どうしたの? お母さんの顔、忘れちゃった?」


 これは、夢だ。そう思ったのは、お母さんがいつもの眉を下げた表情で病院のベッドの上にいたから。そして私が中学の制服を着ていたからだ。


「お母さんっ……!」


 たまらずその胸に抱きつくと、


「あら。どうしたの? 急に甘えたくなっちゃった? 寂しくさせちゃったもんね。ごめんね世羅」

「ううんっ、違うのっ、ただ、お母さんに会いたかっただけっ……!」

「ふふ、昨日も会ったのに? でもお母さんも世羅に会いたかったよ。来てくれてありがとう」


 あぁ、懐かしい声だ。懐かしい腕だ。懐かしい手のひらだ。……ずっと、ずっとずっと、お母さんに会いたかった。


「お母さんっ……もう、二度と会えないかと思ったっ……うっ……うあああっ……」


 お母さんに縋りつき泣きじゃくる私を、お母さんは全てを理解したように抱きしめてくれた。

 何も言わずに、ただただ力強く、ぎゅっと。

 泣き疲れて少し落ち着いた私の背中を、そのままトントンとしてくれて。そして


「世羅にたくさん無理させちゃったね」


 お母さんがぽつりと言葉をこぼす。


「世羅は責任感が強くて、何事にも一生懸命で。誰に似たのってくらい、頑張り屋さんよね」


 首を何回も横に振ると、お母さんは小さく笑う。


「だからきっと、いなくなってた時間も世羅なりに必死に頑張ってたのよね?」

「え……?」

「お母さん、世羅が理由もなくどこかに行くような子じゃないって、ちゃんとわかってるつもり。そりゃあたくさん無理をさせてしまって、たくさん悲しませちゃったけど。世羅は、お母さんを泣かせるようなことは絶対にしないもの」


 これは、あの頃の記憶じゃない。記憶を辿っているわけじゃなくて。


「おかあさっ……ごめんねっ、ごめんなさいっ……! ひとりぼっちにさせて、ごめんなさいっ!」


 今の、今の私とお母さんだ。

 そう気が付いた瞬間、私の身体は二十四歳の姿に変わり、服装も制服からドレスに変わる。


「そんなこと、世羅が気にする必要ないの。あら、それよりもとっても大きくなったのね。そのドレスもとっても素敵よ。似合ってるわ」


 お母さんはなんてことないように笑って、私の身体を離すとまじまじと見てきて。


「よく見せて。……世羅、本当に大きくなったわね。一人で頑張ってきたのね。立派よ。とても。お母さん、誇らしいわ」

「でも……私のせいで、お母さんはつらい思いたくさんしたでしょ……? 家出とか、失踪とか、お母さんのせいだってたくさん言われたんでしょ……?」

「えぇ? そんなこと気にしてたの? 言ったでしょ? お母さんは世羅がそんな子じゃないってわかってるって。何か、どうしようもない理由があったんでしょ? だったら仕方ないじゃない」

「お母さんっ……」


 どうして、お母さんは私を責めないのだろう。どうして、そんなに優しく笑いかけてくれるのだろう。どうして、こんなにも私を愛してくれるのだろう。
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