再召喚され全てを失った元聖女は、麗しの騎士団長様の溺愛で絶望から立ち上がる。
「ロード様! セイロン様! これで視界が安定しましたか!?」

「あぁ! 感謝する!」

「ありがとうございます! ……ですが、何か変です!」

「変、とは?」

「……これだけ瘴気が濃いのに、魔獣の気配が全くしません!」

「確かに。何かがおかしいな」


 ロード様とセイロン様が警戒しながらも剣を下ろし、私を守るように背中を合わせる。


「セーラ、どうだ。源は見つかりそうか?」

「それが、瘴気が濃すぎて全く見つからないんです」


 合流した神官たちも浄化を始めてくれているけれど、瘴気は薄まるどころかむしろどんどん濃さを増しているような気がする。


「これは……一体どうなってるんだ……」

「殿下、一度戻りましょうか。魔獣の危険性はなさそうですが、まず別の問題がないか調査してからの方が安全です」

「そうだな……」


 二人が王宮に戻る方向で話している間、ふと何か気配を感じてそちらを振り向く。


「っ、ロード様! 左!」

「っ!?」


 私の叫び声に瞬時に反応したロード様。その剣先が放たれた先には。


「……な、んだ。こいつ、どこから……」


 額部分に剣が刺さった、狼のような見た目の魔獣の姿があった。


「セーラ。今、気配がしたのか?」

「は、い。一瞬だけですが」

「セイロン、感じたか?」

「全く……」

「俺もだ」

「え……?」


 私だけが、この魔獣の気配を感じ取ったということ?


「まずい。ここは想像以上に危険だ。全員一旦引くぞ! 早く戻れ!」


 ロード様の言葉に頷き、神官たちや騎士団員も含め一斉に転移していく。

 しかしその瞬間、また後ろから気配を感じて


「ロード様! セイロン様! 後ろ!」


 叫ぶと、二人とも振り向く。しかし魔獣のスピードが早すぎて、間に合わない。


「セーラ!」

「セーラ様!」


 ロード様が思い切り投げた剣が、大きな口を開けた魔獣の喉を貫く。しかしそこで魔獣は倒れず、そのまま私の元へ一直線に向かってきた。


「セーラ! 逃げろ!」

「あ……や……」


 逃げないといけないのに、足がすくんで動けない。


「グアアアアアッ!」


 咆哮をあげる魔獣は、私を食べるかのように剣が刺さった口を開けて襲いかかる。

 もう、ダメだ。そう思って諦めかけ、目を瞑った瞬間だった。


「セーラ様!」


 ドンッ! と、身体が思い切り押されて倒れ込む。そしてその直後に


「セイロン!」

「っ……く、あ……っ」


 ――セイロン様が、魔獣に足を噛みつかれて呻き声を上げていた。
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