再召喚され全てを失った元聖女は、麗しの騎士団長様の溺愛で絶望から立ち上がる。

後悔

「クソっ……!」

「せ、セイ、ロン、さまっ……!?」


 何が起こったの……?どうして、セイロン様が魔獣に襲われているの?

 目の前のことに動揺しているうちに、ロード様が魔獣の喉から剣を抜き、そのまま首を落とした。


「セイロン!」

「殿下っ……もうしわけ、ございません……」

「喋らなくていい! すぐに戻るぞ! 誰か! セーラを頼む!」


 まだ残っていた騎士団の一人が私を抱えて、ロード様がセイロン様を抱えて転移する。

 王宮に戻ると、ただちにセイロン様の止血が行われた。


「せ、セイロン様……」

「っ……セーラ、さま。ご無事、ですか……」

「無事ですっ……でも、セイロン様が……」

「僕なら大丈夫です。それよりも、セーラ様をお守りできて何よりです。……っ」

「セイロン! もう喋るなと言っただろ!」


 私を守ろうとして、こんなことに……?

 痛いはずなのに、苦しいはずなのに、私のためにいつもみたいにやわらかく笑ってくれるセイロン様。

 その姿を見ていたら、ふつふつと胸の奥から後悔が湧き上がってきて。その場に座り込んだ。


「わたしっ……」


 私の。私のせい……私のせいで……、セイロン様が。


「セーラ! セーラのせいじゃない! それだけは履き違えるなよ!」


 負の感情に支配されそうになったところを、ロード様が私の肩を掴んでそう叫ぶから、どうにか正気に戻る。

 そうだ。今私がすることは、後悔に押しつぶされることじゃない。苦しさに泣き喚くことじゃない。

 今にも叫びたい衝動をグッと堪えて、足に力を入れて立ち上がる。


「ロード様、手伝ってください! セイロン様の傷の浄化をします!」


 ロード様を見上げれば、安心したように一瞬だけ微笑んで。


「わかった。時間が無い。急ごう」


 そう頷いてくれた。

 ロード様の転移魔法ですぐに神殿に移動し、処置室にセイロン様を運ぶ。


「セイロン様! すぐに浄化しますからね!」

「せ、ら様……」

「喋らないで! どなたか!セイロン様の足を抑えてください!」

「わかりました!」


 神官の一人が抑えてくれて、患部を止血しているガーゼを取り除く。セイロン様の足は血は止まっているものの、瘴気の影響で真っ黒に変色が始まっていた。


「まずいな、急がないと腐敗してしまう」

「腐敗……」


 それだけはなんとしても避けなければ。


「ロード様、今から浄化魔法をかけます。ロード様は私に魔力を注いでもらえますか」

「魔力を?」

「はい。お願いします!」

「わかった!」


 瘴気の浄化を始めてから、怪我人の治療も何度もやってきた。だけどセイロン様の傷は今までとは比べ物にならないほど重く、体調が万全でない今の私では簡単に治るとは思えなかった。だけど、ロード様から譲渡してもらうことができれば。


「行きます! ……浄化!」


 私が浄化魔法を放つと同時に、ロード様がサポートするように私に魔力を譲渡してくれる。すると、手の中で光が渦を巻くように強くなり、セイロン様の足を包み込む。

 少しずつ、少しずつ傷口から嫌な色が抜け、縫合されていく。その様子を見ながら、もっともっとと浄化魔法を注ぎ込んだ。
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