再召喚され全てを失った元聖女は、麗しの騎士団長様の溺愛で絶望から立ち上がる。
「どちらが賭けに勝つか。見届けましょう。あなたが勝てば一人で逃げるがいい。私が勝てば、一緒にあの世で会おう」

「か、いえん様……」

「早くしないと、手遅れになりますよ」


 カイエン様を煽ったのは私だ。煽って煽って、内側から攻撃して結界を壊してもらえればと思っていたから。だけど、まさかこんなことになってしまうなんて。


「どうしました。死にたくなりましたか?」


 今度はカイエン様が私を煽る。

 ぐ、と拳を握り、落ちてくる魔石を一つ拾い、結界に向かって手を伸ばす。


「ロード様! セイロン様! 離れてください!」


 そう叫んで、ぎゅっと目を瞑りありったけの力を手に集める。

 ……そして。


「――浄化!」


 叫ぶと、手に握った魔石が光る。


「なっ……」


 驚くカイエン様の声を背に、浄化された魔石を通して結界に向かって浄化魔法を放つ。

 微量の瘴気が含まれているとはいえ、これは魔石だ。ここに魔法を通せば、魔力は必ず反応するはず。


「お願い……道を開けて……! ――浄化っ!」


 ――瞬間、魔石が強い光を放ったかと思うと、そのまま私の全身を包み込む。

 そしてその光は細く長く形を変え、針のように結界に突き刺さる。


「っ……!」


 そして、パキ、という音と共についに結界にヒビが入った。

 もう少し。あともう少し。

 涙が溢れる。全身の痛みなんて、もう何も感じられない。

 ただ、ひたすらに前だけを見つめて。

 そして、最後の力を振り絞るように、もう一度だけ手に力を込めた。

 ――パキ、と。再び入った亀裂は、どんどん広がっていき。そして最後に、パリンッ!と割れて砕け散る。


「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」

「セーラ!」

「セーラ様!」


 結界が割れたと同時にロード様とセイロン様が飛び込んできて、力尽きたように倒れる私を抱き止めてくれた。


「は、は……まさか、砕けた魔石を利用するとは……」


 魔石が崩れ落ちる中、呆然と割れた結界を眺めるカイエン様。すぐさま騎士団が取り囲み、洞窟から引き摺り出してその身を捕える。


「カイエン、さま」

「……」

「賭けは、私の勝ち、ですよね……?」

「……あなたがこの世界に召喚された時点で、私の負けは決まっていたのかもしれませんね……」


 薄く微笑んで、カイエン様は連れて行かれてしまった。

 私は、そのまま横抱きにしてくれたロード様に身を委ねて。


「セーラ……こんなになるまで……」

「だって……ロード様とセイロン様のお役に立ちたかったんだもの」


 呟けば、ロード様は悲痛な表情で私を見つめる。


「ほんっと……あぁもう! 説教は後だ! まず治療する!」


 転移魔法で戻る頃には、私は気を失ってしまっていたのだった。
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