アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~
「昨日も会っていたのか」
「はい。病院帰りに」
奏の手が、まだ紬希の手首を掴んでいる。
――なんで、こんなに近いんだろ。
紬希は、上を向けない。
「奏さん、その……手」
「……」
奏は、自分が手首を掴んでいることに今気づいたように、視線を落とした。
だが、離そうとはしなかった。
「あの男に、この家のことを話したか」
「話していません。弟のことと、昔の話を少し」
「それだけか」
「……はい」