アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~

「紬希」

 不意に、奏が言った。

「はい」
「……今日の蓮という男」

 紬希は、読んでいた本から目を上げる。

「お前のことを、好いているな」

 断言だった。
 紬希は少し驚いて、答えを探す。

「……昔からそういう人で」
「答えになっていない」

 奏の視線が、真っすぐ紬希を見ていた。

「お前は、どう思っているんだ」

 その問いに、紬希は一瞬だけ奏の目を見た。

「……奏さんには、関係ないと思います」

 ヨーロッパで奏に言われた言葉を、そのまま返した。
 奏が、わずかに目を細めた。
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