アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~

   * * *


 ホテルに戻った夜は、静寂に包まれていた。
 バイキング形式の夕食を終えて、紬希はテラスに出る。
 懐かしさを感じる軽井沢の夜は涼しく、星が近い。
 東京では見えない星が、ここでは両手いっぱいに煌めいていた。

 ――きれいな星空。

 明日の今頃にはもう東京に戻っているのだなと、ぼんやりと空を見上げていると、背後で扉が開く音が響く。

「こんなところにいたのか」

 奏が、グラスを二つ持って立っていた。今夜は星空の下で晩酌をするらしい。

「白ワインでいいか」
「……はい」

 並んで、手すりに寄りかかる。
 夜闇に浮かぶ星を見ながら、グラスを傾けた。
 沈黙が、心地よい。

 ――こういう時間が、好き。

 隣に奏がいる。それだけで、落ち着く自分がいた。
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