アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~

chapter,7




 異変は、八月の終わりに起こった。
 きっかけは、一枚の写真。軽井沢での観光中に撮られたらしい奏と紬希が手を繋いで歩く写真、それが週刊誌のウェブ版に掲載されたことだった。
 見出しには「孤高のピアニスト・多賀宮奏に謎の女性」とある。
 紬希がそのことを知ったのは、佐伯から「奥様、少しよろしいですか」と声をかけられたときだった。
 画面を見た瞬間、血の気がさぁっと引く。

 ――これ、わたしと奏さんじゃ……?

 手を繋いで歩く二人の写真。名前までは晒されていないが、特定されてもおかしくはない。自分だけならいいが、雅希をはじめとした家族にまで迷惑をかけることになったら目も当てられない。奏だって、財団やスポンサー、自分の名前に泥を塗られたと考えるかもしれない。
 幸せそうに見える、その姿が……今はどこか、恐ろしかった。
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