アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~

   * * *


 数日後、伊織から多賀宮家へ紬希に宛てて連絡が来た。
 紬希と直に話したいことがあるのだという。

「お茶でもいかが? 少しお話ししたいことがあるの」

 財閥のパーティーで社交辞令がてら「今度お茶でも」と言っていた伊織が、本気でお茶の席を準備してくるとは思わなかった紬希は、困惑しつつも誘いに応じた。
 待ち合わせ場所に指定されたのは、都内のホテルラウンジ。伊織が食べたかったのだという季節のアフタヌーンティーコースが用意されており、メロンやマンゴーなどの夏の果物がふんだんに使われた色とりどりのプチケーキがお洒落なケーキスタンドに並べられていた。
 伊織は夏らしいエメラルドグリーンのノースリーブワンピースを着ている。相変わらず隙のない華やかな装いで、とりあえずシンプルなワンピースにレースのカーディガンを羽織っている紬希と比べると月とすっぽんである。堂々と座ってケーキを頬張っていた彼女は、沈んだ表情の紬希を見て、わざと明るそうな声をかけた。

「週刊誌の件、ご存知?」

 パッションフルーツの甘い香りが漂う紅茶を飲みながら、紬希は素直に頷く。
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