アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~

   * * *


 問題はその翌日に起きた。
 スポンサー側の担当者が、奏のマネージャーに連絡を入れたのだ。

『奥様が単独でいらっしゃいましたよ』

 その報告が奏に届いたのは、紬希が屋敷に戻った夜のこと。
 リビングに入ると、奏が立っていた。

「……昨日、どこに行った」

 低く、静かな声。だが、その温度がない。

「えっと……」
「スポンサー側に、単独で接触したそうだな」

 紬希は、言葉を失う。そういえば内密にする旨を伝えていなかった、と思うが時すでに遅し。

「なぜ、そのようなことをした」
「それは……奏さんの負担を、少しでも」
「私が許可したか」
「……していません」
「なぜ勝手なことをした」
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