アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~
「……何の用だ」
「久しぶりですね、奏さん。少し話せませんか」
「話すことはない」
即座に、遮った彼はそのまま言い放つ。
「帰ってくれ」
撫子は、少しだけ表情を崩した。
「冷たいですね。昔はそんな人じゃなかったのに」
「昔の話だ」
奏の声は、完全に温度がなかった。
撫子はゆっくりと紬希に視線を移して囁く。
「奥様……奏さんのそばにいるのは、大変でしょう?」
柔らかい声。だが、その奥には鋭い刃がある。
「こんなに冷たい人の妻なんて、あなたには荷が重いんじゃないかしら」
「撫子」