アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~
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撫子が姿を消してすぐ、紬希も玄関を出ていった。病院に行くと言っていたが、大丈夫だろうか。
奏は気になったが、追いかけられずにいた。
『奏さんは、昔から自分の気持ちを言葉にできない人なの。あなたが傷つくだ、け、よ』
紬希に向けて伝えた撫子の言葉が、なぜか奏の耳に刺さっている。
否定できない。事実であるだけに、奏は彼女の呪いのような言葉の残滓に硬直している。
なんせ、その愛を言葉にしようとする寸前に愛していると思った女に裏切られたのだ。名前だけを求められていると気づいたときも、彼女を責めることができず、自分が悪者扱いされ、そのまま関係が終わった。
言葉にしなくても理解しあえると思っていたのは自分だけだったのだろう。それに、紬希にも言えていない。