アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~
* * *
紬希が病院に着くと、ほどなくして主治医に呼ばれた。
診察室の椅子に座り、その言葉を聞く。
「水瀬さん……入院中の雅希くんの様子ですが」
「数値が、少し下がってる?」
血液検査をはじめとしたさまざまな検査結果が記された書類を前に、紬希は顔色を変える。
このあいだ面会したときは何も問題ないと、そう思っていたのに。
青白い表情になった紬希の前で、主治医は淡々と現状と今後の治療について説明をはじめる。
治験で認められた最新の治療法を使うことができれば、回復する可能性は十分あるのだという。
「ただ、その場合……費用面で、少し」
「わかりました」
紬希は即答していた。父を救うことは叶わなかったが、最新の治療法で雅希を救うことができるのなら……。