アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~
「なんとかします」
主治医が部屋を出ていく。
紬希は一人になって、初めて手が震えていることに気づいた。
――なんとか、って?
今の自分に、何ができるのだろう。
奏との契約が終われば、報酬の支払いも終わる。
契約時点で寛解までの治療費の目処は立っていたはずだが、彼の治療が長引くことになったら……。
携帯電話が震える。蓮からのメッセージだった。
『雅希から連絡来ました。検査結果が良くなかったって。紬希さん、無理してませんか? 俺にも相談してください。もっと俺のこと頼ってほしいです。紬希さんだけで背負う問題じゃないはずです』