アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~
紬希は、画面を見つめる。
蓮の言葉は、真っすぐで、誠実だ。
だからこれ以上、負担をかけたくないのだ。
――でも、そんなこと言ったところで彼が引き下がるとも思えない。
奏だったら、どう思うだろう。弟の病状が悪化したから契約を延長してくれ、なんて恥知らずなこと言えるわけがない。
それならばいっそひとりにしてくれと、悪い女になって手切れ金をせびってしまおうか。そして自分を慕っている蓮を利用する?
そのどれもが今の自分とはかけ離れていて、ひどく遠く感じられる。
窓の外には、魚のように白く小さな雲の群れが、秋の空を縦横無尽に泳いでいる。その自由な姿が、どこか羨ましいとまで思えてしまった。