アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~
* * *
紬希から手紙が届いたのは、奏が連絡先として残したドイツのホテルだった。
マネージャーから「奥様からお手紙が届いています」と言われて、ベルリンにいた奏は封筒を受け取る。
リハーサルの合間の休憩時間、楽屋の椅子に座って、深く考えることなく封を開けた。
読み始めた瞬間、何かが止まった……パリの石畳。ウィーンの夜。軽井沢の朝の空気。
紬希の言葉が、旅の記憶と重なって脳裡で流れ出す。
そして、最後の一行。
――ひとりじゃない、と感じさせてくれて、ありがとうございました。
あの夜、廊下で紬希が言った言葉と同じだった。
「……っ」