アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~

 単刀直入だった。
 蓮は少し間を置いて、奏を見る。

「……紬希さんを、幸せにできますか」

 その問いに、奏は一瞬だけ目を細めた。

「する」

 答えに迷いはなかった。
 蓮は、小さく息を吐く。それから、静かに笑った。

「金沢です。お母さんの実家に戻っています」

 そう言って一歩、脇に退く。

「……お願いします」

 その言葉に、奏は短く頷いた。
 背を向けて、早足で廊下を歩き出す。雅希の見舞いは今度でいい、紬希を迎えに行ってからだ。
 背後にあった蓮の気配が遠ざかっていく。

 ――感謝する。

 声には出さなかった。
 だが、奏が心のなかで呟いた謝意は本物だった。
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