アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~

 どんな言葉よりも重い、告白だった。
 切羽詰まった彼の表情を前に、紬希は唇を震わせる。

「……もう一度、俺の妻になってくれ」
「わ、わたしで……いいの?」

 紬希の声が、かすれた。
 だが、奏はそれよりも求婚の答えを求めているようだ。

「返事は?」
「はい……わたしも、あなたを愛しています!」

 紬希が勢いよく返事をするや否や、奏の指が紬希の左手の薬指に指輪をはめていく。
 ひんやりとした金属の感触が、これは夢じゃないと紬希に思い知らせていた。
 奏が、額を紬希の額にくっつけて謝罪する。

「……遅くなってごめん」
「いいえ」

 紬希は、首を振った。

「間に合いました」

 奏が、小さく笑った。
 初めて見る、本物の笑顔だった。
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