アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~
「では、指輪を見せていただけますか」
カメラマンの指示に従い、奏が紬希の左手を取る。
シンプルでありながら存在感のあるプラチナダイヤモンドの指輪が、照明を受けてきらりと光る。
「もう少し、近づいていただけますか」
奏が、紬希の肩を引き寄せる。驚いて奏を見上げる紬希に、自分の左手を見せて高さを揃える。
カメラを見たまま、奏はぽつりと口を開く。
「……共鳴、だ」
「え?」
「リゾナンツァ。イタリア語で共鳴という意味だ」
紬希は、少し考えて、笑った。
「……そうですね」
奏と紬希の音が、共鳴している。
初めて出逢ったあの夜から、ずっと。
「はい、ではいきます!」
花嫁衣裳を着た紬希と奏が顔を見合わせて微笑む。
カメラのシャッター音が祝福のように響いた。