アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~
epilogue
屋敷に戻ると、佐伯が玄関で待っていた。
紬希を見た瞬間、彼女の瞳に涙が浮かぶ。
「……お帰りなさいませ、奥様」
その言葉に、紬希の目頭も熱くなった。
「ただいま戻りました、佐伯さん」
深く頭を下げる。
佐伯は何も言わなかった。
ただ、深く頭を下げて、それから小さく笑った。
屋敷は、変わっていなかった。
家具も、調度品も、ピアノも、全部そのまま。
ドレスルームには、紬希が置いていったドレス類がそのまま残っていた。
奏は、なにひとつ処分していなかった。