アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~
 いや、変わったのではないのかもしれない。これが本来の彼の愛し方。いままで隠していたものが、少しずつ外に出てきただけなのだろう。
 奏は相変わらず無口で、不器用で、ぶっきらぼうだ。
 それでも、紬希には優しい。

「紬希」

 ベッドの上で、奏が囁く。背後から彼に包まれた状態で名を呼ばれた紬希は先ほどまでの余韻に浸りながら、ゆっくりと声を放つ。

「はい」
「明日、コンサートがある」
「存じています。すでにチケットも」
「客席で聴いてくれ」
「え」

 いつもは舞台袖か関係者席で聴くのに、どうしたのだろう。首を傾げる紬希に、奏はそれ以上説明しない。

「客席、ですか?」
「ああ」

 ――なぜだろう。

 紬希は首を傾げながら、「わかりました」と応じる。彼はそんな彼女を愛おしそうに抱きしめた。
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