アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~
「食べられないものはあるか」
紬希は顔を上げる。奏は書類から目を離さないままだが、確かに彼の声だった。
「……いいえ、特には」
「そうか」
ふたたびその場を沈黙が襲う。
紬希はメインの肉料理だという牛肉の赤ワイン煮込み――ブフ・ブルギニョンのフォークを持ち直して、もう一度口をつける。少しだけ味が分かった気がした。舌のうえでホロホロとほどけていく。
デザートのクレームブリュレが運ばれてくる頃、奏が再び口を開いた。
「困ったことがあれば言え」
今度は書類を閉じて、紬希を見ていた。
「使用人には私から伝える。遠慮する必要はない」
「……はい」
「外出したいときは、スケジュールを事前に共有してくれれば問題ない。行動を制限するつもりはない」
紬希は顔を上げる。奏は書類から目を離さないままだが、確かに彼の声だった。
「……いいえ、特には」
「そうか」
ふたたびその場を沈黙が襲う。
紬希はメインの肉料理だという牛肉の赤ワイン煮込み――ブフ・ブルギニョンのフォークを持ち直して、もう一度口をつける。少しだけ味が分かった気がした。舌のうえでホロホロとほどけていく。
デザートのクレームブリュレが運ばれてくる頃、奏が再び口を開いた。
「困ったことがあれば言え」
今度は書類を閉じて、紬希を見ていた。
「使用人には私から伝える。遠慮する必要はない」
「……はい」
「外出したいときは、スケジュールを事前に共有してくれれば問題ない。行動を制限するつもりはない」