アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~
そう思うのに、腰にふれた手の温度が、まだ残っている気がした。
「……気にするな」
不意に、奏が口をひらく。
「三条のことだが」
「え」
「あれは家同士での話だ。君には関係ない」
紬希は、少し驚いて奏を見る。
奏は窓の外を向いたまま、それ以上何も言わない。
――関係ない、って……?
庇ってくれた。そして、気にするなと言ってくれた。たとえそれが契約上の判断だとしても。
なぜか、紬希の胸の奥がじんわりと温かくなっていた。