アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~
 チェックインしたホテルはパリ・オペラ座の近くで、目の前の重厚感に圧倒された。
 クリーム色の外壁、鍛鉄のバルコニー、調度品が並ぶ博物館のようなロビー。
 天井も高く、どこを見ても美しい。

「ホテルのスイートですか」
「現地のマネージャーいわく、すでに一室しか残ってなかったそうだ」
「じゃあ寝室は」
「俺はどこでも寝れる」

 さっきも飛行機のなかで寝たしな、と呟きながら奏は案内された部屋で荷物をひろげていく。
 紬希は途方に暮れた表情のまま、室内を見回す。広い室内にはダブルベッドがひとつ。奏は雑魚寝する気満々だが紬希ひとりで眠るには大きすぎる。

 ――夫婦だからひとつの部屋になってるのに、寝るのは別々なんだ……。

 契約婚なのだから仕方がない。だが、ほんの少し残念な気持ちになってしまった。
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