アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~
――なんだろう、これ。進化してる……?
演奏は続く。
紬希は気づかないうちに、指先を握りしめていた。
ショパンのノクターンからはじまった奏の演奏はそのまま幻想即興曲、シューマンのダヴィッド同盟舞曲集……と流れるように進んでいく。
クライマックスはふたたびショパンに戻り、情熱的なバラード第一番へ。静かな導入から中盤にかけての盛り上がりと崩れ落ちるような抑揚ある旋律がその場を完全に支配する。抑えていた感情が一気に溢れ出したかのような終盤まで、ひとつの恋物語を見ているかのような錯覚に陥る。
盛大な拍手。そしてアンコール――奏が、鍵盤の前に座り直す。
「……!」