アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~
* * *
その夜、眠れなかった紬希はホテルのバーで一人でグラスを傾けている奏を見つけた。紬希と異なり何度もウィーンで仕事をしている彼は隙あらばひとりでふらふら出かけている。なかでも隣接する屋内型ショッピング施設、リングシュトラーセギャラリーがお気に入りらしく、観光客が行かない庶民的な市場にも顔を出しているらしい。だが、今回は滞在時間が短いためホテル内の散策に留めているようだ。珍しいなとバーでひとりカクテルを嗜んでいる彼をまじまじと見つめると、奏も気づいたのかこちらへ声をかけてきた。
「眠れないのか」
紬希は素直に頷き、彼に近づく。
「少し、喉が渇いて」
「飲むか?」
促されるまま、隣の椅子に腰を下ろす。クラシカルな内装のバーカウンターにはオレンジ色のグラスが置かれている。彼のグラスから一口カクテルを飲んだ紬希はそのアルコールの強さに思わずむせそうになる。
「っ! 何飲んでるんですか」
「見ればわかる。テキーラ・サンライズだ」
「わかりませんって」
その夜、眠れなかった紬希はホテルのバーで一人でグラスを傾けている奏を見つけた。紬希と異なり何度もウィーンで仕事をしている彼は隙あらばひとりでふらふら出かけている。なかでも隣接する屋内型ショッピング施設、リングシュトラーセギャラリーがお気に入りらしく、観光客が行かない庶民的な市場にも顔を出しているらしい。だが、今回は滞在時間が短いためホテル内の散策に留めているようだ。珍しいなとバーでひとりカクテルを嗜んでいる彼をまじまじと見つめると、奏も気づいたのかこちらへ声をかけてきた。
「眠れないのか」
紬希は素直に頷き、彼に近づく。
「少し、喉が渇いて」
「飲むか?」
促されるまま、隣の椅子に腰を下ろす。クラシカルな内装のバーカウンターにはオレンジ色のグラスが置かれている。彼のグラスから一口カクテルを飲んだ紬希はそのアルコールの強さに思わずむせそうになる。
「っ! 何飲んでるんですか」
「見ればわかる。テキーラ・サンライズだ」
「わかりませんって」