アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~
仕方なく、交差点の店先の軒下で雨宿りする。向かいにはちいさな花屋があった。いまの季節にぴったりな紫陽花の鉢植えが外に並べられていたが、雨風が強くなってきたため店員が店のなかに避難させている。紫だけではない薄桃色や白、赤ワインのような色とりどりの紫陽花をぼんやり眺めていると、スッと黒い傘が隣に差し出された。
「何見てるんだ」
「紫陽花……って、奏さん?」
振り返ると、奏が立っている。
仕事から帰る途中だったのだろう、スーツ姿のまま、大きな傘を差し出している。
「なぜここに」
「佐伯から連絡が来た。雨で足止めされているんじゃないか、と」
さらりと言う。
「……佐伯さんが?」
「行くぞ」
「えっと」
そう言ってすたすた歩きだした方向は、なぜか反対方向で。
紬希は奏とともに花屋の店内に入っていた。
「何見てるんだ」
「紫陽花……って、奏さん?」
振り返ると、奏が立っている。
仕事から帰る途中だったのだろう、スーツ姿のまま、大きな傘を差し出している。
「なぜここに」
「佐伯から連絡が来た。雨で足止めされているんじゃないか、と」
さらりと言う。
「……佐伯さんが?」
「行くぞ」
「えっと」
そう言ってすたすた歩きだした方向は、なぜか反対方向で。
紬希は奏とともに花屋の店内に入っていた。