アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~
 ――こんなに近くにいるの、初めてじゃ……。

 意識しすぎないように、前を見て歩く。
 雨音が、傘を叩くなか、二人分の足音が、石畳に響いている。

 ――だけど、落ち着く。

 紬希は、こっそり思った。こういう時間もいいな、と。
 何も言わなくていい。
 ただ、隣にいるだけでいいのだ、と。
 屋敷に着くまでの短い道のりが……今はひどく、名残惜しかった。
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