アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~
 紬希は、本のページを繰るふりをしながら、その横顔を見ていた。
 やがて奏が、ふと手を止め、こちらに気づく。

「見ていたのか」

 紬希は慌てて本に目を落とした。

「見ていません」
「嘘をつくな」
「……少しだけ」

 奏は、小さく息を吐く。教本を閉じ、取り出した譜面を希へ見せる。

「なら、聴いてもらってもいいか……うまく弾けないところがあるんだ」

 奏が、珍しく自分から口を開く。

「? どのあたりですか」
「この、第三楽章の冒頭。テンポが乱れる」

 紬希は、本を閉じてピアノに近づく。

「聴かせてもらえますか」
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