アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~

   * * *


 翌日、蓮が屋敷を訪ねてきた。
 紬希が玄関に出ると、蓮は手土産の紙袋を持って立っている。

「昨日、渡し忘れたものがあって。これ、雅希から頼まれていた本です」
「わざわざありがとう。上がる?」
「少しだけ」

 応接間に案内して、お茶を用意してもらう。
 蓮は室内を見回しながら、感嘆の声をあげた。

「すごい家ですね」
「……最初は慣れなかったけど、今は少し慣れてきました」
「――紬希さん、ここで幸せですか」

 彼は真剣な目をしていた。
 紬希は、お茶のカップを置いて彼の榛色の瞳を見つめる。

「レンくん」
「俺、ずっと……」

 そのとき応接間の扉が悲鳴のような音をたてて開いた。
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